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伊坂幸太郎の小説をすべて読んだ僕が、おすすめの順にランキングとレビューをしていく

はじめに

これは伊坂幸太郎の小説をすべて読んだ僕の独断と偏見によるランキングである。また本記事では、この記事を書いている2016年08月現在までに単行本として出版されているすべての伊坂幸太郎の小説をランキング付けしている。これから伊坂幸太郎を読む人、ひさしぶりに伊坂幸太郎を読む人、そういうひとのちょっとした参考になればと思う。

 

 

 

 

1位 アヒルと鴨のコインロッカー

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

「一緒に本屋を襲わないか」大学入学のため引っ越してきた途端、悪魔めいた長身の美青年から書店強盗を持ち掛けられた僕。標的は、たった一冊の広辞苑――四散した断片が描き出す物語の全体像とは? 清冽なミステリ。

 

第25回吉川英治文学新人賞作。一言でいえば、だれもラストを予測できない小説。なぜ広辞苑を盗むためにモデルガンを片手に本屋を襲うのか――そんな魅力的な謎からはじまるこの物語は、このミステリーがすごい二位にも選ばれている。現在と二年前のエピソードが交互に展開していき、そのすべての印象的で面白いエピソードがすべて衝撃的なラストの伏線になっているのだからすごい。動物虐待、とある病気、とある差別、とある大切な人の死、リアルと寓話のちょうど真ん中みたいな雰囲気をぜひ読んで味わってほしい。

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

 

 

2位 チルドレン/サブマリン

チルドレン (講談社文庫)

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々――。何気ない日常に起こった5つの物語が、1つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。

 

一言でいえば、ニヤニヤせずにはいられない小説。この小説を読んで、家裁調査官である陣内というキャラクターにぜひ出会ってほしい。きっと感動し、苦笑し、どこかリスペクトし、あきれ果ててしまうと思う。けれどどうしようもなく陣内というキャラクターのことを好きになってしまうのである。風変わりなキャラクター、洒脱で軽快な会話、わけのわからない感動、そういうものがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。銀行強盗の人質になった盲目の青年、万引き犯、時間の止まった公園、どのエピソードにも謎があり、爽快である。そして『チルドレン』を読んでハマってしまったら、続編『サブマリン』も読んでほしい。どちらも最高に面白い。

チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

 

 

サブマリン

サブマリン

 

 

3位 死神の精度/死神の浮力

死神の精度 (文春文庫)

第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞作。CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。

 

ほとんどの死神が適当に仕事をする中、千葉だけは自分の仕事にこだわりをもっている。「余計なことはやらない、仕事だからだ」。そんなちょっと変わった愛嬌のある死神が観察する、六つのエピソード。正直、死神の千葉のクールで愛らしいキャラクター性だけで読んでいける。六つのそれぞれのエピソードは小さな共通項でリンクしていき、最期の一ページに用意された最高なフィナーレに導いてくれる。メーカー勤めのOL、やくざ、ブティックの店員、人殺し、美容院の老女、彼ら彼女らと死神の千葉が出会うことで生まれる物語は、読み終えたとき、きっと元気になったりヤル気になったり、そういうなにか変化があると思う。なのでぜひ読んでみてほしい。『死神の精度』が面白かったら、続編の『死神の浮力』もすでに出版されているのでさらに楽しんでほしい。

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

 

 

死神の浮力 (文春文庫)

死神の浮力 (文春文庫)

 

 

4位 オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島"には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?

 

伊坂幸太郎のデビュー作。まず、「未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?」という魅力的な謎が素晴らしい。極上のミステリーである。登場するキャラクターも魅力的で、喋る案山子、詩集を読む殺人鬼、嘘しか言わない画家、太りすぎてその場から動けない婦人など、どこか癖のある人物ばかりである。読みはじめたら最後の一ページまで手が止まらないこと必須。

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

 

 

5位 陽気なギャングが地球を回す

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

市役所で働く成瀬、喫茶店主の響野、20歳の青年久遠、シングルマザーの雪子たちの正体は銀行強盗。現金輸送車などの襲撃には「ロマンがない」とうそぶく彼らの手口は、窓口カウンターまで最小限の変装で近づき「警報装置を使わせず、金を出させて、逃げる」というシンプルなものだ。しかしある時、横浜の銀行を襲撃した彼らは、まんまと4千万円をせしめたものの、逃走中に他の車と接触事故を起こしてしまう。しかも、その車には、同じ日に現金輸送車を襲撃した別の強盗団が乗っていた。

 

とにかくスリリングなサスペンスである。ギャング団のメンバーは、確実に他人の嘘を見抜くリーダーを筆頭に、正確な体内時計の持ち主、演説の達人、天才スリという個性派ぞろいの面々。そのギャング団が銀行強盗の逃走中にほかの車と接触事故を起こしてしまい、しかもその車には別の強盗団が乗っていてトラブルは拡大していき――と、もはやこのあらすじだけで先が気になってしまう。しかもこのシリーズは、あと二冊出版されていて、この『陽気なギャングが地球を回す』が面白かったら、『陽気なギャングの日常と襲撃』と『陽気なギャングは三つ数えろ』もぜひ読んでほしい。最高の読書時間になること請け合いである。

 

6位 マリアビートル

マリアビートル (角川文庫)

幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテイメントを追い抜く、娯楽小説の到達点!

 

伏線伏線伏線! あの小道具も、あのエピソードも、あの会話も、すべてが伏線! もはや異常である。読んでいる最中は、まるでジグソーパズルがひとつひとつ綺麗にはまっていくような快感を味わい続けることができる。殺し屋ばかりが出てくる話なのに、クスっとできる文章がたまに出てくるのも伊坂小説ならではの楽しみである。蜜柑と檸檬というキャラクターが好きだった。さらに本作を読む前に『グラスホッパー』を読んでいれば、二倍しめるので時間があるのならば『グラスホッパー』→『マリアビートル』の順で読まれることをおすすめしたい。

マリアビートル (角川文庫)

マリアビートル (角川文庫)

 

 

 

 

 

7位 ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞受賞作。仙台での凱旋パレード中、突如爆発が起こり、新首相が死亡した。同じ頃、元宅配ドライバーの青柳は、旧友に「大きな謀略に巻き込まれているから逃げろ」と促される。折しも現れた警官は、あっさりと拳銃を発砲した。どうやら、首相暗殺犯の濡れ衣を着せられているようだ。この巨大な陰謀から、果たして逃げ切ることはできるのか?

 

一言でいえば、「痴漢は死ね」というフレーズで読者を感動させて号泣までさせる小説。かなりメジャーな作品のため避けていたのだが、読んでみるとページをめくる手がとまらないほど面白かった。かつてアイドルを助けたことで英雄ともてはやされていた主人公の青柳雅春が、大統領暗殺の濡れ衣を着せられ、かなり過激な追手集団がから逃げる逃走劇。逃げている途中、連続殺人鬼にであったり、大学時代の恋人や友達のことを思い出したり、家族のことを回想したりするのだが、とくに大学時代の恋人である樋口晴子との関係性がすごくいい。というか樋口晴子が可愛い。正直、樋口晴子の可愛さだけで読んでいける。いや、ほんとに。

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

 

 

8位 ラッシュライフ

ラッシュライフ (新潮文庫)

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

 

2003年度版このミス11位。五つのバラバラな物語が少しずつ重なり合って、最後にカチっとひとつの絵ができあがる。その物語の構造のつくりは非常に巧みで、もはや芸術品レベルである。多くの伊坂ファンが、「伊坂幸太郎を知らないともだちに伊坂幸太郎をおすすめするなら、まずこの一冊」というらしい。傑作ミステリーである。

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)

 

 

9位 砂漠

砂漠 (新潮文庫)

入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決……。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれを成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。

 

本書にはとても大胆なミステリー的な仕掛けがしてある。それは物語の中で起こる様々な事件とはまた別のところにあるギミックで、最後まで読んだ後に「え、あ、そういうこと? なるほどね~」とニヤニヤしてほしい。ちなみに登場する大学生たちは充実した青春を謳歌しているので、ぼっちが読むにはちょっと眩しすぎるかもしれない。個人的にはボウリング対決の場面が好きだった。というか、ボウリングをするときの描写が本気すぎて笑った。普通の小説家はボウリングの描写でこんな凝ったりしない。伊坂幸太郎スゴすぎ。

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)

 

 

10位 バイバイ、ブラックバード

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)

星野一彦の最後の願いは何者かに“あのバス”で連れていかれる前に、五人の恋人たちに別れを告げること。そんな彼の見張り役は「常識」「愛想」「悩み」「色気」「上品」――これらの単語を黒く塗り潰したマイ辞書を持つ粗暴な大女、繭美。なんとも不思議な数週間を描く、おかしみに彩られた「グッド・バイ」ストーリー。

 

五股をかけている男の、五つの別れのエピソードである。主人公が五股男という設定がぶっとんでいるが、まあとにかく面白い。伊坂小説のなかでいちばん好きな小説というわけではないのだけれども、つい読み返してしまうのはいつもこの『バイバイ、ブラックバード』である。とにかく読んでみてほしい。本書に限っては、できればレビューなど見ず、前知識なしの状態で読んでほしいとおもう。とにかく不思議な魅力のある物語なのだ。

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)
 

 

11位 グラスホッパー

グラスホッパー (角川文庫)

元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに――「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!

 

最後の一文がこれほど強烈で印象的な小説は他にないだろう。鳥肌がたつこと請け合いである。とはいえ、この作品に関しては、かなり評価が分かれるというのが僕のイメージである。いちばん好きだという人もいれば、地味すぎるという人もいる。賛否両論。僕はかなり好きだったが、こればかりは実際に読んで確かめてほしい。そして⑥位の『マリアビートル』は本作の続編である(物語はそれぞれ独立しているけど、キャラクターがクロスオーバーしている)。グラスホッパー』が面白かったら、『マリアビートル』まで続けて読むと深く楽しめるようになっている。

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

 

 

12位 アイネクライネナハトムジーク

アイネクライネナハトムジーク

ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、元いじめっこへの復讐を企てるOL……。情けないけど、愛おしい。そんな登場人物たちが紡ぎ出す、数々のサプライズ! ! 伊坂作品ならではの、伏線と驚きに満ちたエンタテイメント小説!

 

本書には伊坂幸太郎らしいひねった設定も奇妙な登場人物も出てこない。けれど読むとすごく幸福な気分になれる、そういう物語である。帯には「ごく普通の人たちが巻き起こす、小さな奇跡の物語」と書いてあった。読んでいるとニヤニヤしてしまうエピソードがたくさんある。そして最後の物語で、それまでの伏線がきれいに回収されるのは圧巻である。ちょっと疲れたときに読むのと、超いやされると思う。

アイネクライネナハトムジーク

アイネクライネナハトムジーク

 

 

13位 重力ピエロ

重力ピエロ (新潮文庫)

半分しか血のつながりがない「私」と、弟の「春」。春は、私の母親が×××されたときに身ごもった子である。ある日、出生前診断などの遺伝子技術を扱う私の勤め先が、何者かに放火される。町のあちこちに描かれた落書き消しを専門に請け負っている春は、現場近くに、スプレーによるグラフィティーアートが残されていることに気づく。連続放火事件と謎の落書き、×××という憎むべき犯罪を肯定しなければ、自分が存在しない、という矛盾を抱えた春の危うさは、やがて交錯し…。

 

伊坂幸太郎といえば、兄弟愛、家族愛である。本書は伊坂幸太郎版の『罪と罰』といわれるほど、かなり闇の深い青春ミステリー小説である。けれど暗いだけではなくて、やっぱりキャラクターは魅力だし、読み進めていくうちに主人公の兄弟のことをどんどん好きになっていく。さらに提示される謎、謎、謎の連続は、ページをめくる手をとめさせない。おそらく高校生くらいの年頃に読むと、強烈に共感できる箇所がいくつも出てくると思う。もちろん大人が読んでも、最高に楽しめる。

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

 

 

14位 オー!ファーザー

オー!ファーザー

一人息子に四人の父親!? 由紀夫を守る四銃士は、ギャンブル好きに女好き、博学卓識、スポーツ万能。個性溢れる父×4に囲まれて、高校生が遭遇するは、事件、事件、事件――。知事選挙、不登校の野球部員、盗まれた鞄と心中の遺体。多声的な会話、思想、行動が一つの像を結ぶとき、思いもよらぬ物語が、あなたの眼前に姿を現す。伊坂ワールド第一期を締め括る、面白さ400%の長篇小説。

 

父親が四人いるというぶっとんだ設定の物語である。ギャンブラー、色男、熱血教師、大学講師というまったくタイプの違う四人の父親を持つ高校生が主人公。『重力ピエロ』や『ゴールデンスランバー』とはまたちがったカタチの家族愛が描かれていて、「理想の家族ってなんだよ」ということを考えさせられる。緻密な伏線も、ジェットコースターのような展開も、ユーモアあふれるセリフ回しも、とにかくエンターテインメントである。読むと、とにかく元気が出るので、ちょっと退屈しているときなどに読むと、テンションが上がると思う。

オー!ファーザー

オー!ファーザー

 

 

15位 残り全部バケーション

残り全部バケーション (集英社文庫)

当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに―。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。

 

起承転転転結のような展開で、ラストがまったく予想できない。ハードボイルドのようでありコメディのようでもある本書。とにかくエンディングが素晴らしい。たとえ第一章、第二章、第三章を読んだ時点で「これ面白いのか?」と疑問に思っても、最後の第四章を読めば、「やっぱり最高じゃねえか!」となること請け合いである。なにがなんでも最後までよんでほしい小説。

残り全部バケーション (集英社文庫)

残り全部バケーション (集英社文庫)

 

 

16位 ガソリン生活

ガソリン生活 (朝日文庫)

のんきな兄・良夫と聡明な弟・亨がドライブ中に乗せた女優が翌日急死!パパラッチ、いじめ、恐喝など一家は更なる謎に巻き込まれ…!?車同士がおしゃべりする唯一無二の世界で繰り広げられる、仲良し家族の冒険譚!愛すべきオフビート長編ミステリー。

 

車同士がしゃべるとか機関車トーマスかよと言いたくなるが、これがまた面白い。「車が主役とかぜったい面白くないだろ」と思う人もいるだろうけれど、そんなことはまったくない。むしろマジでもったいない。頭文字Dを読めばハチロクが気になり、湾岸ミッドナイトを読めばZが気になりはじめるように、本書を読むと緑のデミオが気になりはじめてしまう。最終章で満足して、さらにエピローグまでエンターテインメントが詰め込まれていて大満足することになるだろう。

ガソリン生活 (朝日文庫)

ガソリン生活 (朝日文庫)

 

 

17位 終末のフール

終末のフール (集英社文庫)

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。

 

三年後に世界が終わることを前提として人間が生きている世界。届く人にはきちんと届くテーマと物語であり、よく分からないという人にとっては、どうでもいいテーマと物語だろう。「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」というような、かなり尖った言葉が散りばめられている。三年後に滅んでしまう世界で生きている登場人物たちの言葉や行動はどこか洗練されている。高校生、大学生くらいのひとが読むとけっこう影響を受けるんじゃないかなと思う。個人的にはけっこうおすすめ。

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)

 

 

18位 魔王/モダンタイムス

魔王 (講談社文庫)

会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。5年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。

 

特殊能力をもった兄弟の物語。視線を向けた相手を自由に喋らせることができる兄と、やたら運が良い弟。第一章で語られる兄の物語を読んだ後の、弟の章である『呼吸』はとにかく素晴らしい。とにかく運がいい弟はその力をつかってとある計画を建てる。たったひとりで世界を救ってしまいそうな静かさは、ただただ脅威である。『呼吸』はほんとに素晴らしい物語なのでぜひ読んでほしい。そしてこの『魔王』という物語は、『魔王』の五十年後の世界を描く『モダンタイムス』への序章でもある。

 

モダンタイムス (Morning NOVELS)

 

恐妻家のシステムエンジニア渡辺拓海が請け負った仕事は、ある出会い系サイトの仕様変更だった。けれどもそのプログラムには不明な点が多く、発注元すら分からない。そんな中、プロジェクトメンバーの上司や同僚のもとを次々に不幸が襲う。彼らは皆、ある複数のキーワードを同時に検索していたのだった。5年前の惨事――播磨崎中学校銃乱射事件。奇跡の英雄・永嶋丈は、いまや国会議員として権力を手中にしていた。謎めいた検索ワードは、あの事件の真相を探れと仄めかしているのか? 追手はすぐそこまで……大きなシステムに覆われた社会で、幸せを掴むにはーー問いかけと愉(たの)しさの詰まった傑作エンターテイメント!

 

『モダンタイムス』は、漫画週刊誌「モーニング」で連載された作品である。謎と陰謀が次から次へと出てくる展開は、読み手を興奮させる。何度も何度も何度も繰り返されるどんでん返しは、「もういいよ……。マジで何回ひっくり返すんだよ……」といいたくなってしまうほどであるが、それでも楽しめる。そしてなによりエンディングが最高である。あらゆる謎と陰謀に直面して、真実を知った後の、爽やかすぎるエンディング。「勇気はあるか?」と作中なんども訊ねられる主人公が、最後の最後にその質問に対する答えを出す。その答えがちょっと笑ってしまうような、肩の力が抜けるような、それでいてうんうんと頷いてしまうような、そんな答えで最高なのである。ぜひ読んでみてほしい。

魔王 (講談社文庫)

魔王 (講談社文庫)

 

 

モダンタイムス (Morning NOVELS)

モダンタイムス (Morning NOVELS)

 

 

19位 火星に住むつもりかい?

火星に住むつもりかい?

住人が相互に監視し、密告する。危険人物とされた人間はギロチンにかけられる―身に覚えがなくとも。交代制の「安全地区」と、そこに配置される「平和警察」。この制度が出来て以降、犯罪件数が減っているというが…。今年安全地区に選ばれた仙台でも、危険人物とされた人間が、ついに刑に処された。こんな暴挙が許されるのか?そのとき!全身黒ずくめで、謎の武器を操る「正義の味方」が、平和警察の前に立ちはだかる!

 

魔女狩りを行う平和警察を相手に、ひとりで立ち向かうヒーローの物語である。伊坂幸太郎の書くヒーローというのは、まあ魅力的だ。行動の動機やら武器やらすべてがユーモアとセンスに溢れている。テーマは、正義と偽善の違いとか、集団心理の恐ろしさとか、国家権力の横暴、などであるが、それらがウィットに富んだ文章でクールに述べられていく。特に好きなのは、「人間が人間らしく振舞えるのは群れていない時だけだ」という部分。もちろんどんでん返しもある。最高のエンターテインメント小説である。

火星に住むつもりかい?

火星に住むつもりかい?

 

 

20位 フィッシュストーリー

フィッシュストーリー (新潮文庫)

最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の表題作ほか、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など、変幻自在の筆致で繰り出される中篇四連打。爽快感溢れる作品集。

 

個人的にだが、この短編集に関しては後ろの方から読んでいったほうがいいのではないかと思う。それはひとつめの、『動物園のエンジン』を退屈に思う人が意外に多いからである。それならいちばん面白い『ポテチ』や表題作の『フィッシュストーリー』から読んだ方がきっとつまずくことなく楽しめると思う。話はすべて独立しているので、どの短編から読んでも問題はない。とにかく『ポテチ』と『フィッシュストーリー』だけは読んでほしい。あと『ポテチ』は映画もとてもよく出来ているのでぜひ観てほしい。

フィッシュストーリー (新潮文庫)

フィッシュストーリー (新潮文庫)

 

 

21位 首折り男のための協奏曲

首折り男のための協奏曲

首折り男は首を折り、黒澤は物を盗み、小説家は物語を紡ぎ、あなたはこの本を貪り読む。胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。

 

首折り事件がニュースで報道され、それを見ていた女性が、犯人の特徴から隣人が犯人なんじゃないのか? と疑を持つ『首折り男の周辺』をはじめたとした七つの短編からなる短編集である。あいかわらず伊坂幸太郎のユーモアが炸裂している。本作で語られるとある「偶然」は、ああそんな偶然あったらいいよなと、つい思ってしまう。

首折り男のための協奏曲

首折り男のための協奏曲

 

 

22位 夜の国のクーパー

夜の国のクーパー (創元推理文庫)

目を覚ますと見覚えのない土地の草叢で、蔓で縛られ、身動きが取れなくなっていた。仰向けの胸には灰色の猫が座っていて、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と声を出すものだから、驚きが頭を突き抜けた。「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。戦争が終わったんだ」猫は摩訶不思議な物語を語り始める―これは猫と戦争、そして世界の秘密についてのおはなし。

 

戦争で敗れた国に住む猫、怪物「クーパー」の退治に向かった兵士、トムが偶然知り合った公務員、そのバラバラな三つの視点が、怒涛の伏線回収が巻き起こるラストでパズルのように一枚の絵になっていくのは読んでいて快感である。さすが伊坂幸太郎といわずにはいられない。ファンタジー要素が強いので、ちょっと読み手を選ぶかもしれない。

夜の国のクーパー (創元推理文庫)
 

 

23位 キャプテンサンダーボルト

キャプテンサンダーボルト

人生に大逆転はあるのか? 小学生のとき、同じ野球チームだった二人の男。二十代後半で再会し、一攫千金のチャンスにめぐり合った彼らは、それぞれの人生を賭けて、世界を揺るがす危険な謎に迫っていく。東京大空襲の夜、東北の蔵王に墜落したB29と、公開中止になった幻の映画。そして、迫りくる冷酷非情な破壊者。すべての謎に答えが出たとき、動き始めたものとは――。現代を代表する人気作家ふたりが、自らの持てる着想、技術をすべて詰め込んだエンターテイメント大作。

 

伊坂幸太郎芥川賞作家である阿部和重の競作。伊坂幸太郎といえばユーモアと伏線回収、阿部和重といえば陰謀、それらが合わさって極上のエンターテインメントになっている。しかしながら伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』や『アヒルと鴨のコインロッカー』、阿部和重の『シンセミア』や『ピストルズ』にはやはり敵わないような気がする。お互いの良いところと悪いところを中和されてしまっているような感じになっているのは否めない。伊坂幸太郎らしさ、阿部和重らしさを求めて読むと、「うん?」となるかもしれない。逆に、伊坂幸太郎のことも阿部和重のことも知らないひとが読んだらとんでもなく面白い小説なんじゃないかと思う。

キャプテンサンダーボルト

キャプテンサンダーボルト

 

 

24位 PK

PK (講談社文庫)

彼は信じている。時を超えて、勇気は伝染する、と――人は時折、勇気を試される。落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。三つの物語を繋ぐものは何か。読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。

 

『PK』『超人』『密使』という三篇からなる短編集。それぞれ異なった読後感を与えてくれるので、一冊読むとまるでフルコースの料理でも食べたような満足感を味わえる。『PK』で感動して、『超人』で興奮して、『密使』では謎解きを楽しむ。そしてこの三つの短編をすべて読んだ後、とある仕掛けを見ることになる。読んだ人にしかわからないそのギミックとぜひであってほしい。

PK (講談社文庫)

PK (講談社文庫)

 

 

25位 あるキング

あるキング: 完全版 (新潮文庫)

山田王求。プロ野球チーム「仙醍キングス」を愛してやまない両親に育てられた彼は、超人的才能を生かし野球選手となる。本当の「天才」が現れたとき、人は“それ”をどう受け取るのか――。群像劇の手法で王を描いた雑誌版。シェイクスピアを軸に寓話的色彩を強めた単行本版。伊坂ユーモアたっぷりの文庫版。同じ物語でありながら、異なる読み味の三篇をすべて収録した「完全版」。

 

伊坂幸太郎の作品の中でおそらくいちばん賛否両論が別れる小説。伊坂幸太郎の小説でよくみられるサスペンス要素を期待して読むと、途中で飽きてしまうかもしれない。これは寓話であり、幻想文学であり、野球漫画であり、天才野球選手の伝奇である。伊坂幸太郎の『魔王』あたりが好きなら楽しめると思う。とりあえず、他には類をみない野球小説であることは断言できる。

あるキング: 完全版 (新潮文庫)

あるキング: 完全版 (新潮文庫)

 

 

26位 ジャイロスコープ

ジャイロスコープ (新潮文庫)

助言あります。スーパーの駐車場にて“相談屋”を営む稲垣さんの下で働くことになった浜田青年。人々のささいな相談事が、驚愕の結末に繋がる「浜田青年ホントスカ」。バスジャック事件の“もし、あの時…”を描く「if」。謎の生物が暴れる野心作「ギア」。洒脱な会話、軽快な文体、そして独特のユーモアが詰まった七つの伊坂ワールド。書下ろし短編「後ろの声がうるさい」収録。

 

これもかなり異色の伊坂小説。『魔王』や『あるキング』が好きなら読んでみてほしい。クリスマスプレゼントと児童虐待の話、『一人では無理がある』と、『セミンゴ』という謎の生物についての話、『ギア』がおもしろかった。

ジャイロスコープ (新潮文庫)

ジャイロスコープ (新潮文庫)

 

 

27位 SOSの猿

SOSの猿 (中公文庫)

三百億円の損害を出した株の誤発注事件を調べる男と、ひきこもりを悪魔秡いで治そうとする男。奮闘する二人の男のあいだを孫悟空が自在に飛び回り、問いを投げかける。「本当に悪いのは誰?」はてさて、答えを知るのは猿か悪魔か?そもそも答えは存在するの?面白くて考えさせられる、伊坂エンターテインメントの集大成。

 

続けてになってしまうが、これも異色な伊坂小説である。伏線回収の名手である伊坂幸太郎が、伏線で遊びまくっている。わざと回収しない伏線、回収はするが回収するだけで特に意味のない肩透かしの伏線、いつも通りのハッとするような綺麗な伏線。それを遊び心だとかユーモアだといわれてしまうとそれまでだけれど、ミステリー的な面白さを伊坂幸太郎に期待してしまっている人にはちょっと退屈に感じられるかもしれない。

SOSの猿 (中公文庫)

SOSの猿 (中公文庫)

 

 

28位 実験4号

実験4号

舞台は今から100年後、温暖化のため火星移住計画の進んだ地球―。火星へ消えたギタリストの帰りを待つバンドメンバーの絆の物語(伊坂幸太郎『後藤を待ちながら』)と、火星へ旅立つ親友を見送る小学生たちの最後の2日間(山下敦弘『It’s a small world』)が、いま爽やかに交錯する。熱狂的人気を誇る二人が場所やキャラクターをリンクさせた奇跡のコラボレーション作品集。Theピーズの名曲『実験4号』に捧げる、青春と友情と感動の物語。

 

これは伊坂幸太郎の中編小説『後藤を待ちながら』と、山下敦弘の四十分程度の映像『It’s a small world』からなる物語である。たぶん、もう書店には売っていないと思うので図書館で借りるか、中古品を買うかしか入手経路がないと思うが、『終末のフール』が好きなひとならきっと気に入るのでぜひ観てほしい。映像を見るよりも先に小説を読んでいた方が、映像を観たときスッと理解できるので、小説→映像の順番に鑑賞するのをおすすめしたい。

実験4号

実験4号

 

 

まとめ

これはあくまで僕の独断と偏見によるランキングであり、伊坂幸太郎の小説でいちばんの萌えキャラは『ゴールデンスランバー』の樋口晴子であると思っている僕の個人的な感想である。これから伊坂幸太郎の小説を読もうと思っている人、ひさしぶりに伊坂幸太郎の小説を読もうと思ったけれどもたくさん出版されていてどれから読んでいいか迷っている人、そういうひとが伊坂作品を選ぶときのちょっとした参考になればと思う。

それにしても長かった。すぐ書き終わるだろうと思っていたけれども、マジで長かった。次は東野圭吾あたりをまとめたい。

 

 

おわり